村上 拓「バイクに跨がりカメラを腰に携える男」

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40歳の時にバイクの免許を取った。人生半ばにして何か忘れてないかと思った時に、それは色々有るのだがとりあえず簡単に出来る事と言えばバイクの免許を取る事だった。車を使うより化石燃料の消費が大幅に減少するし、道路における占有面積を大きく減らせるという大義名分で周囲を納得させた。教習所通いが途中で挫けるといけないと言う理由で(これは本当だ)教習所申し込みと同時にバイク買った。(見たら欲しくなったとも言える。)乗りこなせるかどうかも分からないしとりあえず中型400ccである。乗り始めて3ヶ月程立ったある日、信号待ちで止まっているとハーレーのスポーツスターが脇に並んだ。ライダーは長身の抜群のスタイル、そしてこの上も無い美女(かどうかはスモークのゴーグルだったので分からない)である。彼女がチラッとこっちを見た。そしてバイクに目をやると「ふん!」てなもんで前方に視線をもどし、信号が青になると同時に私を置き去りに走り去った。次の日に私は大型教習を申し込んだ。その後、遅れを取り戻すかのように12台のバイクを乗り継いだ。しょうもない贅沢親父だと怒られそうだが、実はそんなに金をかけず乗り継いでいる。そこらへんの言い訳と言うか詳細は別ページに記す。既に約20万キロを走行している。

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ところで、私は何者かというとカメラマンである。正確に言うとシネマトグラファー(動く映像を撮る)である。テレビCMとか、ミュージックビデオとか、少ないが映画も撮っている。スチィール(写真)も営業品目に入っている。当初はCMやミュージックビデオの作品をアップして派手な営業用ホームページにする予定だった。実際完成させた。しかし最近は個人情報とか肖像権とか厳しい。サッカーのイギリス代表のキャプテンと元歌手の妻、最近子供を産んで話題のアメリカのアイドル歌手の映像とかも含まれるので巨額の肖像権料とかの請求書が届いても対応不可である。しかし走り始めたのに止まるのは癪だ。そこで大幅に方向転換し主にバイクの旅を映像と文章で綴るホームページとしてスタートする。バイクとカメラの関係はスイートだ。クルマだと小回りが利かないしボディー・シェルにより周囲から隔離され物が見えない。歩きや自転車が一番だが(私には)スロー過ぎる。旅と言ってもすぐそこかも知れないし遠い街かもしれない。バイクに乗る事が目的だ。行く先も決めないし地図も持たない気ままなクルージングだ。そしてカメラはいつもウエストバックに入っていて何時でも取り出せる。
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今回訪れた場所は茨城県土浦市小野である。別にはじめからその地を目指した訳ではない。筑波山のワインディングでも(のんびり)走ろうと思ったのだが2輪の走行は禁止。仕方なく方向を変え田舎道に入り込んだらそこは小野小町の里。小野小町が人生の終焉を迎えた地だというのだ。小野小町と言えば世界3大美女の一人。そんなお人が何でこんな筑波山麓のど田舎(町の人ごめんなさい素敵な町です本当に)で一生を終えたのか。世界3大美女と言えば、クレオパトラ7世、楊貴妃、そして小野小町。古い話だ、とてつもなく。その後3大美女は更新されてないのだろうか。エンターテイメントの世界から一人、マリリン・モンローとかどうだろう。
iTunesにSwing Marilyn Swing(1992年Remix)が入っていたはずだ。クリックしてみる。PCにつないだFostex BC10から流れる音楽に引きずり込まれる。BC10は10数年前に限定生産された10cmシングルコーンフルレンジスピーカーだが、小振りながらもリアルな音場空間を作り出しトリップさせてくれる。マリリン・モンローはウォーホルも作品の素材に使ってるが、その存在の輝きは抜きん出ている。1962年のマジソンスクエアガーデンでの(彼女との関係が噂されてた)ケネディー誕生パーティーで歌った「Happy birth day to you・・・」なんてスゴすぎる。彼女はこの年生涯を終えるがその死はミステリアスだ。ケネディーもその翌年凶弾に倒れる。波乱の生涯、政治家との関係、時代背景など資格は有りそうだが・・・。話がだんだん横道に逸れてきたが仕方ない。ライダーに寄り道はつきものだ。

それで、小野小町の墓だがあまりにもひっそりとして、訪れる人も少なそうで郷愁を誘う。旅は郷愁だ。

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山裾のこじんまりとした静かな農村集落というのが小野の最初の印象だった。しかし、ちょっと走って出会うのは、いい感じに古びた山寺。緑に囲まれた石段を上っていくと現れるのは由緒有りそうなお屋敷。くりぬいた竹に飾られた紫の花。そこかしこに見られる地蔵や石碑。ごく自然でさりげない美しさが有る。忘れ去られつつあるもの、消え去りつつある物のはかない美が有る。仕事で日本に限らず世界各地を訪れる。ニューヨークのような大都会、ヨーロッパの古い町並み、マウナ・ケアの山頂、霧にかすんだネス湖、空から見たキリマンジェロそれらは皆素晴らしいのだが、一人でバイクにまたがり気ままにクルージングして偶然見つけた隠れた古の里、これもまた良い。ただし、彼女またはお子様を連れてのドライブとかにはお勧めしない。地味すぎるかもしれない。もののあわれを解すあなたにお勧めだ。
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かつて「イージーライダー」という映画が有った。2人の若者がバイクで放浪する話だ。「俺たちに明日は無い」「真夜中のカウボーイ」などと共にアメリカン・ニューシネマと言われる作品だ。自由とか反体制がテーマだった。バイクはクルマとは別な所を走る感じだ。その点でバイクは自由だし、反体制とまで思わないが少なくともクルマ的な常識からは外れている。
現在1400cc190馬力、レブリミット11000回転なんてエンジンを積んだバイクを筆頭に、これに乗っていいんですが的な怪物マシンが数種ラインナップされている。思い出すのはドイツのアウトバーンをクルマで走った時のことだ。速度無制限だが、いくらでもスピード出しなさいと言う事では無いと思う。法律では縛りませんがあなたの良識を信じますと言われてる気がした。1999年に日本のメーカーが時速300kmをオーバーするバイクを販売した。しかし、ユーロ諸国でさすがに問題視され、メーカーは慌ててスピードリミッターを付けた。といっても300km/hで作動するモノだが。これはもう異次元だ。日常を逸脱した異世界。この世界の住人は自分を律してほしい。でないとすぐに規制されてしまう。
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小野の話に戻るが、この辺りはかつて常陸の国と言われた文化圏だった。ちゃんと調べれば歴史とか建築物の由来とかもっと面白い発見が有るかもしれない。しかし、ライダーは詳細にはこだわらない。ふらりと訪れ、感じて、そして去っていく。
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記述日2006.11.25